どんぐりとアリ
いつも歩く林道で、足音が少しずつ小さくなって
その分、足音で消されていた山の音が聞こえます。
立ち止まることが少なくなってしまうこの季節で、
ふっと見上げたどんぐりの木。
その下には、紅の葉に隠れ、帽子をかぶったままのどんぐりの実。
ゆっくり手にとってみれば、どんぐりにくっついていたアリが
慌てて手の中で逃げ回っています。
そっと戻せば、アリは巣に帰るかもしれないし、途中で食べられちゃうかもしれない。
そっと戻せば、どんぐりは来年、芽を出すかもしれないし、腐るかもしれない。
それは、私には分からない。
もう、あの枝には戻れないどんぐりの実と、私がぐっと手を握れば死んでしまうアリ。
だから私は願いを込めて、そっと戻すのです。
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